若いうちに一生働かなくても生活できるだけの資金を確保し、早期リタイアすることに憧れを抱く人が増えています。

アメリカでは若くして早期リタイアすることをFIRE(Financial Independence / Retire Early =経済的に自立した早期退職)と表現し、アメリカでも若くして労働から解放されることを望む人の存在がうかがえます。

一生分の生活資金が確保出来たら、ほとんどの人は働きたくないと考えるでしょうし、人生のあらゆる不安や問題は解消されると考えがちです。しかし実際に早期リタイアやFIREを実現すると、また別の不安に苛まれることになるようです。

今回は早期リタイアやFIREを達成したことで発生する新たな不安や問題について書いてみました。

早期リタイア・FIREの問題1:お金(資産)が減る恐怖


早期リタイアやFIREをすると、多くの場合、収入が減ります。これまでは会社員などをしながら給与所得を得ていたのに、仕事を辞めるのですから当然です。

FIREをする人は、給与所得がなくなっても資産運用などによりカバーできる人がほとんどだと思いますが、それでも、資産を取り崩しながら生活することになったり、これまで安定的に得られていた給与所得が無くなることは恐怖心につながります。

もちろん、こういった恐怖心が生まれることも想定したうえでFIREしているはずですが、これまでは順調に増える一方だった資産総額が徐々に減っていく恐怖を克服できるのか?FIREの実現には経済的な問題よりも、心理的な問題の方が多い気がします。

実際、「お金のために労働をする必要が無くなったのでセミリタイアします。」「FIREを実現しました」という方でも、Uber Eatsやアルバイトなどで細々と労働収入を稼いでいるようです。

セミリタイアした本人は「お金のために働いているのではない」と口では言っていますが、実際には『お金が減っていく恐怖』に耐えられずに働いているように見えてしまいます。

 

また、十分な資金を確保してFIREしたとしても、税制の変更などで当初の予定よりも早く資金が底をつく可能性もあります。

現在の日本の税制では、株式の譲渡益や配当金への課税は20.315%の税率ですが、今後はこの税率が30%程度まで高まる可能性があります。将来的には『資産課税』が採用され、保有している資産に対して”持っているだけ”で課税されることだってありえます。こういった事態も想定したうえで早期リタイアしていない場合には、なおさらお金(資産)が減っていく恐怖に苦しめられることになりかねません。

早期リタイア・FIREの問題2:今の仕事と賃金を捨てるとほぼ100%復活できない

『いまの職や立場、賃金(給与)を捨てると、2度と同じ役職や賃金を得られない可能性がある』というのも心配です。

独立してもやっていけるだけのスキルや資格を持ち合わせているなら問題ありませんが、現在の日本の場合、一度会社を辞めてリタイアしてしまうと元の役職や賃金を手に入れることは不可能です。

この『元には戻れない不可逆的な雇用体系』であるがゆえに、「お金が必要になった際、元の雇用条件に戻れる保証はない」という不安を抱きながら生活することになります。

会社員をしているときにも「いつ会社が潰れるかわからない」という不安はあったかもしれませんが、少なくとも会社員をしている限りは毎月決まった金額がもらえるし、給料をもらいながら転職活動を続けたり資格取得などスキルアップのための勉強を続けることができました。

FIREとは、安定的な給与を失うとともに、「もう2度と、いまと同じだけの給与をもらうことはできない」ということを意味します。ある種の博打をしてでもFIREしたいのか?それだけの価値があるのか?FIREする前によく考え、準備しておかなければ一生後悔し続けることになりかねません。

早期リタイア・FIREの問題3:暇すぎる

一般的な社会人の場合、一日8時間程度を労働にあてています。FIREすると労働しなくなるため、一日で8時間もの余暇が生まれ、相当な時間が余ります。

この余暇時間を何に使うのか決めておかないと、1年もすればFIREに飽きてしまうでしょう。

経済的には余裕があるため、再び労働を始める場合には「趣味で働く」ことになりますが、お金があったとしても幸福な時間を過ごせるとは限りません。なんとも贅沢な悩みですね。

早期リタイア・FIREの問題4:人間関係の構築

働いていた人は、仕事上の人間関係が多いです。

セミリタイアして仕事上の付き合いが無くなると、プライベートでの人付き合いをイチから構築しなくてはならなくなります。

必然的にセミリタイアした人たち同士でつながるか、時間やお金に余裕のある富裕層とのつながりを増やすか、老人など定年退職した人たちとのつながりを新たに作ることになります。

こういった人間関係の構築が得意でない方は、お金をたくさん持っていたとしても、早期リタイア後に孤独感や人間関係で苦労するでしょう。

セミリタイアやFIREにも それなりの苦労がある

以上のように、一生分の生活資金を十分に貯めることができたとしても、実際に早期リタイアしたりFIREしたりした場合には、それなりの苦労があります。

居場所や社会的な地位を失うこと、経済ショックにより運用資産の価値が激減してしまう可能性があること、何らかの理由により労働の再開を強制された場合には、以前のような給与や役職は得られないこと…。FIREする場合には、これらの不安要素を抱えながら長い人生を歩まなければなりません。

どのような人生を選ぶのかはその人の自由ですが、経済的な勝ち組になったとしても不安や苦労は尽きないのだな…と感じました。私も早く同じ悩みに悩まされるようになりたいです。

本気でFIREを目指している方はこちらの本も読んでおきましょう。

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