投資を始めた若い世代の人が一度は考えたであろうことをズバッと言い表したtweetを見かけました。

https://twitter.com/drifting_into_u/status/1421727395610959874

私も以前は同じことを考えていたので、この考え方はよく理解できます。そして、年金も払っていませんでした。

しかし最近では年金への理解が進み、年金は払った方がお得だと断言できるようになったので年金保険料を払うようにしています。未納だった国民年金も、払える期間内のものは全部払いました。

今回は年金は払った方が得な理由について解説いたします。

「年金を払うのは損」と考える理由

私は現在では年金を払うのは得だと考えていますが、年金について理解が浅かった頃には逆の考えをしており、年金を払っていませんでした。そのため、年金を払うのは損だと考えている人の気持ちがよ~く理解できます。

払わない理由は主に3つあります。

  • 日本は超少子高齢化のため、自分が高齢者になったころには年金制度が破綻している
  • 世代間の不公平感
  • 日本という国が信用できない(どうせ日本は破綻するのだから、年金も破綻するに決まっている)

日本は”超”少子高齢化の国

なぜ年金は払い損になると考えてしまうかというと、日本が超少子高齢化の国だからです。

年金を受け取れる老人(受給者)の数が増えるのに対し、年金を払う若い世代の数が減っているため、収支バランスとしては圧倒的にマイナスな状況が今後数十年間も続きます。そのため、自分が年金の受給年齢に達した時には年金機構にお金が残っておらず、自分は年金をもらえないのではないか?と心配になります。

また、年金の保険料(払う金額)は年々上昇していますが、貰える金額は変わりません。受給開始の年齢も段々上がっていくため、自分が高齢者になった頃には受給開始が80歳とか85歳になっている可能性があり、寿命を考えると払い損になるのではないか?と考えるのは当然です。

世代によってもらい得・もらい損の差が激しい

世代間の不公平感も根強いです。

いまの高齢者は若い頃の保険料が激安だったのに、もらうときは高額な年金を受給しています。圧倒的な「もらい得」です。

しかし、いまの若者が高齢者になったときには保険料が高いわりに受給額が少なくなって可能性が高く、また、受給開始年齢も上がっているため確実に「もらい損」をします。

こんな不公平な制度は存続すべきではない、早急に破綻すべき!いや、破綻して欲しい!という考えから、年金を払わないのも納得できます。

国が信用できない

若い世代の人は、年金制度だけではなく日本という”国”のことも信用していません。将来年金をもらうためには、年金制度が存続しているだけではなく、日本という国家が存続していることが前提条件となります。

しかし日本の政治を見ていると、公務員が公文書の改ざんをしていたり、感染症が広がる中で政治家が集団でパーティーをしていたりして、日本の将来に不安が募ります。

50年後、70年後まで生きる確率が高い若い世代ほど「将来もらえるかもしれない年金よりも、いまの生活資金が大事」であり、「日本の政治を見る限り、日本国に将来はない」と見限り、どうせ国が破綻するなら年金を払っても無駄という考えから年金を払わなくなるのは合理的です。

年金を払うくらいなら自分で資産運用した方がマシなのか?

相場環境が非常によく、年金を払うくらいなら自分で資産運用した方がマシだと考えられる状況も、年金を払わない原因になっています。

株を買えば年間で平均5%程度の運用利回りでお金を増やせます。とくにここ最近では、アメリカ株を買えば年間で10~20%もお金が増えました。

それに、年金は受給資格を満たさない限り1円ももらえません。株なら、売りたいときに売って現金に換えられます。

将来もらえるかわからない年金のためにお金を使うよりも、株を買った方がマシだと考えるのも理解できます。

年金を払わない理由
  • 日本は超少子高齢化のため、自分が高齢者になったころには年金制度が破綻している
  • 世代間の不公平感
  • 日本という国が信用できない(どうせ日本は破綻するのだから、年金も破綻するに決まっている)
  • 株を買った方が年金よりもお金が増やせる

それでも、年金は払った方が得

「年金を払わない人の意見」はとても納得のできるものでしたが、それでも私は年金は払った方が得だと主張します。

理由は主に下記の4つです。

  • 年金は長生きすれば得。平均寿命は延びている
  • 税制面で優遇されている
  • 障害を負った時に助けてもらえる
  • そもそも年金は保険であり、資産運用とは別物

年金は長生きすれば得。平均寿命は延びている

年金は長寿に備える保険です。長生きすれば勝ち・早死にすれば負けるギャンブルとも言えます。

平均寿命よりも遥かに前に死ねば払い損になりますが、平均寿命まで生きれば得をします。そして、平均寿命よりも長く生きられれば”ご褒美”として、さらに得をすることになります。

日本人の平均寿命は延び続けており、いま年金保険料を払っている年代の人たちの寿命は120歳ともいわれています。分子生物学者によれば「寿命が200歳の人類はもうすでに生まれている」そうですし、受給年齢が上昇して受け取れる年金額が徐々に減っていったとしても、実はいまの若者が受給年齢に達したころには平均寿命も延びており大幅に得をしている可能性があるわけです。

老後資産をすべて自分で準備しておくのは限界がありますので、長生きしてしまったときのために年金は払っておいた方がいいと私は考えます。

年金は税制面で優遇されている

年金は税制面でも優遇されています。

年金を払う時に社会保険料控除がされ、年金を支払った後の金額に課税されます。また、年金を貰う時にも公的年金控除がありますし、障害年金では非課税になります。

「日本の政治家はクソ。日本もクソ。こんな奴らに税金を払いたくない。」という方がいると思いますが、少なくとも年金制度に関していえば税金とはほとんど無縁でいられますので、年金は払っておいた方がいいです。

障害を負った時に助けてもらえる(障害年金)

不慮の事故により体が動かなくなったり大怪我をして働けなくなった場合など、障害を負った際にも年金は有利です。

危険な仕事に従事していなくても、誰もが事故や病気により、ある日突然、五体満足ではいられなくリスクがあります。ある程度であれば民間の保険でもそういったリスクに備えることはできますが、一生涯となると話は別です。

民間の保険会社は営利企業が運営していますので、加入者に支払える保険金には上限あります。できるだけ保険金を払わない方が会社にとっては得なので、なんやかんや理由を付けて保険金の支払いを拒否したり、保険金を出し渋ったりするのが普通です。

障害年金にも受給するための要件がありますが、民間の保険会社よりも手厚く補償されていますし、生涯お金をもらい続けることができます。いざとなれば税金からお金を出してくれるので、金欠だから年金を払ってくれなくなるということもありません。

年金は払っておいて損はないと断言できる一番の理由です。

そもそも年金は保険であり、資産運用とは別物

さきほども書きましたが、年金は「長生きするリスク」に備える保険です。

通常の民間の保険が「早死にしたときに備える」のは理解しやすいのですが、年金は逆のリスクに備えています。そして人間は、長生きすることにもリスクが伴います。

長生きするリスクに関して年金で備えられるのは主にお金に関してだけですが、多くの人にとって老後のお金のことは心配だと思います。老後2000万円問題が話題になりましたが、あれは平均寿命まで生きる予定の人の場合は、仕事を引退する時点で2000万円必要なだけであって、100歳まで生きる人は2000万円用意していたとしても生活資金が枯渇してしまいます。

だからこそ長生きしてしまったときでも経済的に困らないようにするために、年金は必要です。

また、年金を払うよりもそのお金を自力で資産運用した方が得だと考える人もいますが、そもそも年金は保険であり、資産運用とは別物です。

たしかに、運用効率だけを考えれば、保険に入る必要はありません。しかし、事故やケガで働けなくなったり、予定よりも長生きしてしまい経済的に苦しくなったりするリスクを考えれば、保険(年金)に入る意義があります。

それに、資産運用は良いときも悪いときもあります。

【危険】S&P500に投資しても儲かるとは限らない!アメリカ株信者に伝えたい3つの弱点【初心者向け】でも書きましたが、直近10年間の株価の推移を見る限りでは、自力で資産運用した方が高利回りでお金を増やせました。しかし次の10年間も同じとは限りません。ましてや、自分が高齢者になる20年後、30年後はどうなっているのかなんて、誰にも予測できません。現在の運用効率が将来も続くと楽観的に試算し、保険をかけずに資産運用にばかりお金を振り分けるのはリスクが高すぎます。○○ショックが来たらどうするんですかね?

年金の場合、65歳からは老齢年金が死ぬまでもらえますが、国民年金の場合、老齢年金額は年間78万円です。しかも繰り下げ受給をすれば、さらにたくさんもらえます。20歳~60歳までの40年間で納める保険料は約800万円ですから、およそ10年間で元が取れることになり、その後はひたすら得をすることになります。こんなに美味しい案件を放っておくのはもったいないです。

税制面で優遇され、障害を負った際の補償が付き、さらには長生きすればノーリスクでお金をもらい続けることができるのですから、保険料を払わず年金を自ら手放すのは投資家として自殺行為と言えます。

年金を払った方が得な理由
  • 年金は長生きすれば得。平均寿命は延びている
  • 税制面で優遇されている
  • 障害を負った時に助けてもらえる
  • そもそも年金は保険であり、資産運用とは別物

以上の理由から年金は払った方が得だと言えますので、日本国民だけが受け取れる特権だと思って年金保険料は払っておきましょう。

日本を脱出する人は払わなくてもいいです

年金制度は国民からの関心が非常に高い制度ですので、年金制度が破綻するときは国家の信頼がゼロになり、国も破綻します。また、別の理由により国が先に破綻した場合には、国が存続できない状態なわけですから、年金制度のことなんて心配している場合ではありません。よって、様々な問題はあれど年金制度は存続できることになり、保険料は払い続けるしかないという結論になります。

「どうせ日本は破綻するから年金なんか払わなくてもいい」と言っている人は、当然、将来は他の国で生活する予定なのだと思います。日本語しか喋れず、日本の会社で働き、日本でしか生活する力を持っていない人がそんなことを言うはずがないですからね。しかしもしも日本に住み続ける予定だという方は、年金を払っておいた方が無難なのではないでしょうか。

実際、冒頭のツイートをした方のプロフィールを見ると、【将来の夢:日本脱出】とあります。英語学習もされているようです。こういう方は、日本の年金は払わず自力で資産運用した方が得かもしれません。

「海外に移住するし、その準備もしているから日本の年金制度は不要。だから保険料も払わない。自分で資産運用する。」というのであれば理解できますが、日本に住み続けるのであれば年金は払っておいた方がいいですよ…というお話でした。

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