2018年も年末になってしまいました。
この時期の株式市場では「節税売り」と呼ばれる売り注文が発生しがちです。
今回は節税売りの方法、および節税売りが出やすい銘柄について解説します。
節税売りの目的
そもそも節税売りとはどのようなものかというと、今年1年間で確定利益のある方が他に持っている含み損銘柄を一旦売って損失を確定し、そのあと買い戻すことにより今年分の利益を圧縮することです。
利益が圧縮されることにより、支払う譲渡益税の金額が減らせます。
たとえば今年1年間で10万円の利益を確定している方が、他に5万円の含み損銘柄を抱えているとします。
この場合、何もせずに年を越してしまうと10万円分の利益は手に入りますが、この利益に対応した税金も同時に支払うことになります。
今年中に節税売りをして5万円分の損失を確定しておいた場合、年間の利益はすでに確定させた10万円の利益から5万円が引かれ、「年間で5万円の利益を出した」ことになります。
- (確定済みの利益)10万円-(含み損の確定)5万円=(年間の利益)5万円
年間での利益が減ったことにより、これで支払う税金も減らすことができました。
特定口座源泉徴収アリで取引していた方は、既に支払っていた確定利益10万円分に課税されていた譲渡益税のうち、約半分が戻ってくることにもなります。
損失をリセット
節税売りをした後で損失を確定した銘柄をもう一度買い戻せば、気持ちを切り替えて再スタートすることができます。
「もう少し待てば含み損から含み益に変わる」という確信のある銘柄については節税売りした後でもう一度買い戻し、来年以降、含み益が乗ってきてから売却した方が税金的にはお得になります。
節税売りの方法
節税売りの方法です。
大きく分けると2パターンありますので、ご自分の好きな方を選んでください。
【一般的な節税売りのパターン】
- 含み損銘柄を一旦売って損失を確定する
- 翌日になってから、同じ銘柄を買い戻す
もっとも簡単な方法ですが、この場合、一旦売った銘柄を買い戻す際、必ず翌日まで待ってから買戻しをしなければなりません。
一旦売った同じ日のうちに買戻しをすると、買付平均単価が変わって節税効果が薄れてしまいます。
別の日付で取引することで節税売りの効果を最大限に発揮できますので、必ず同一営業日には売却・買戻しをしないように注意しましょう。
一日待つ間に株価が大きく変動してしまいそうで気になるという場合は、別々の証券会社を使って同じタイミングで損失の確定(証券会社A)、買い戻し(証券会社B)をすることもできます。
ただしこの場合は取引数量が多いと相場操縦だと疑われる可能性があるため、資金量の少ない方、取引枚数の少ない方だけが使えます。
【現引きクロスによる節税売り】
信用取引口座を開設している方は、現引きクロスという手法も使えます。(現引きとはは信用口座で買った株を現物口座に移すこと)
- 含み損銘柄(現物)を売る。同時に信用取引で同じ銘柄を買う
- 翌日、信用取引で買った分を現引き(げんびき)する
信用口座と現物口座(一般的な口座)は別物として扱われます。
そのため、同一営業日に「現物売り・信用買い」をしても問題になりません。
(さきほどのパターンは「現物売り・現物買い」)
信用口座で買った分を翌日になってから現引きすることで、含み損銘柄の損失を確定した後、もう一度平均単価の安い株価で買い戻したのと同じことになります。
節税売りが出やすい銘柄
最後に、節税売りが出やすい銘柄についてです。
節税売りが出やすい銘柄は、「たくさんの人たちが含み損を抱えていそうな銘柄」ということになります。
特に信用取引(制度信用)をしている方は、買ってから6カ月以内に売却(返済注文)しなければならないルールがありますので、
- 6カ月前に株価が大きく上昇していたが、現在は株価が下落している
- 信用買い残高が多い
このような銘柄では節税売りが出やすいです。
2017年の場合だとドリコム (3793)が節税売りの対象になりやすいとされました。

株価チャートを見ると2017年6月頃に株価がピークを打ち、その後は下落に転じています。6月のお祭り状態のときにドリコムを買っていた方は(ほぼ全員)年末まで含み損を抱えていることになり、節税のために切り捨てられることが多かったようです。
納税を先送りするテクニック
以上、節税売りについて解説してきましたが、結局のところ節税売りとは「納税の時期を先送りするためのテクニック」に過ぎません。利益の確定を先延ばしにすることで、譲渡益税の納付を先延ばしにしていきます。
節税売りは確定利益のある人しか使えない技なので、まだ節税売りをしたことがない、あるいはできる状態にない方は、来年こそは節税売りができるくらい株式投資の成績を向上させたいですね。
参考リンク:
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