上記は先日の日本経済新聞の記事ですが、ESGブームにより機関投資家が化石燃料企業やタバコ企業からもの凄い勢いで投資撤退(ダイベストメント)していることが書かれています。
欧州運用大手カンドリアムは9月、石炭やタバコ、兵器などに関わる企業を投資対象から一掃すると表明した。社会的責任投資(SRI)のファンドでは約20年前から除外してきたが、年末までに総額1210億ユーロ(約15兆6千億円)の運用資産全てに広げる。
米運用助言会社アラベラ・アドバイザーズによると化石燃料関連からの撤退を宣言した機関投資家の運用総額は、世界で6兆2400億ドル(約700兆円)に上る。2014年の520億ドルから120倍に急増した。7月にはアイルランド議会が政府系ファンドの化石燃料関連資産を5年以内に全て処分する法律を通した。
投資撤退することはESGの観点からも悪影響
ESG投資とは、環境や企業統治、社会貢献に配慮した企業に投資したり、反対に環境汚染や健康に悪い製品を作っている企業(ヴァイス銘柄)から資金を引き揚げたりすることです。
近年の世界的な投資テーマの1つとなっており、当サイトでも何度か取り上げてきました。
ESG投資ほど環境に悪い、企業統治が当てにならない、怪しくてうさん臭いテーマはない – ぼくらの投資 マネーリテラシー
ESG投資が流行る理由はお金の価値が下がっているから?ESG投資は大金持ちの道楽なので庶民には無縁 – ぼくらの投資 マネーリテラシー
ESGは確かに素晴らしい理念を持っているのですが、実態はそれほど環境に優しくないし企業統治もできていないため、個人的な見解としては「投資対象としては不適格」というのが私の立場です。
日本経済新聞ではESGがいまいち信用できない理由として、このほかに「化石関連企業から資金を引き揚げることは、結果的に環境への貢献を阻害する」といった指摘をしています。
つまり、ESGに反する企業から投資撤退しても、ESGにはプラスにならないという意見です。
たとえば二酸化炭素を排出せず環境に優しいとされている風力発電所を作る場合、発電設備を建設するためにはトラックで資材を運ばなければなりません。
資材運搬に使うトラックは化石燃料で動かしているわけで、燃料が無くなれば当然風力発電所の建設もできなくなります。
化石業界から投資撤退するとこのような事態が起こりうるため、必ずしもESGにはプラスにならないわけです。
もちろん長期的には化石燃料を使わない輸送用機器を使い、まったく環境負荷をかけない方法で発電所等を建設できるようになるかもしれません。
しかし現状ではまだその段階まで達しておらず、”ESGのため”という大義名分で化石業界から撤退することは、ESGの観点からはむしろマイナスの行動とも言えます。
ESG関連企業では株主構成が変化しつつある
冒頭の引用記事に書かれているとおり、大手運用会社や政府系ファンドなどの機関投資家はESGの観点から化石燃料やタバコ企業からの投資撤退を進めています。
日本のタバコ企業では日本たばこ産業(JT・2914)などが該当し、これまで大株主だった海外の機関投資家たちが撤退しているようです。
今年のJTの株主構成がどうなったかは気になるところ。ESG投資で外国法人の持ち分が減って個人が増えてるのは間違い無いと思う。
— ひとり配当金生活-さいもん (@hitori_haitou) 2018年12月5日
https://t.co/B1v7r7GsRU
外国法人等の持ち分
2015年3月 33.63%
2016年3月 32.10%
2017年3月 30.92%
2018年3月 27.44%
これがどう変化してるか。— ひとり配当金生活-さいもん (@hitori_haitou) 2018年12月5日
株主優待の変更も個人株主がおそらく激増している事と無関係じゃないと思うけどどうなんだろう
— ひとり配当金生活-さいもん (@hitori_haitou) 2018年12月5日
外国法人等の海外機関投資家たちがJT株を売って、彼らが売った分を日本の個人投資家たちが買っているのでは?との予測をしています。
JTは最近株主優待制度の変更をしていますが、個人株主が増えたことが制度変更の理由ではないか?との指摘には納得できます。
私はこれまで株主構成比率を気にしたことがなかったので、1つの考え方としてとても勉強になりました。
JTのように反ESG銘柄(ヴァイス銘柄)では外国人投資家が抜けていき、逆にESG銘柄には外国人による買い注文がしばらく続く可能性があります。
個人的にはESGは馬鹿げたテーマだと思っていますが、外国人投資家の人気に便乗して利益を出すのであれば、検討する価値があるかもしれないと感じました。