発行済み株式のうち、市場に出回っている分を自社で買い戻す「自社株買い」。
一般的には自社株買いを発表することで株価が上昇するので、株主にとっては”良いこと”だとされています。
今回はこの自社株買いのメリットとデメリットについて解説し、自社株買いを発表した企業の株を買うことが必ずしも良いこととは限らない点について考えてみました。
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自社株買いをメリットと捉える人たちの意見
一般的には自社株買いが発表された企業の株は「買い」だとされています。
自社株買いをすることで投資家たちが手に入れられる浮動株の数が減るので、需給バランスが変わって「供給量の減少」へとつながり株価上昇に寄与するからです。
台風が直撃して野菜畑が全滅した際に、スーパーに出荷される葉物野菜が不足して値段が上がっていくのと同じ原理です。
供給量が増えれば値段が下がりますが、供給が減れば値段が上がることになります。
これと同じ仕組みで自社株買いをすることは株価上昇につながります。
「企業側は将来もっと株価が上がることを見越して、いまのうちに自社株買いをしている」という見方もできるため、買いが買いを呼び株価の上昇にもつながります。
投資家的には自社株買いにはメリットしかないように感じられますが、デメリットも存在しています。特に長期投資を行っている方にとっては無視できないものです。
自社株買いをデメリットと感じる人の意見
自社株買いは企業が持っている資本(お金)で自社の株式を買い戻す活動です。
つまり本来であれば設備投資に使ったり研究開発に使うこともできたお金を、「自社株式の購入」という、企業価値の向上に貢献しない方法で消費してしまったことになります。
これは言い換えれば、企業の将来的な成長を阻害することとイコールになるので、長期的な企業価値の向上や業績の向上を期待していた投資家にとってはマイナスの出来事です。
持っているお金は有効に使い、
- 従業員教育を徹底する(戦力の充実化)
- 従業員の給料を増やす(長く安心して働いてもらえる環境を整備する)
- 商品の生産設備の省力化に投資する(低コスト化)
- 事業所を増やして営業エリアを拡大する
- 優秀な技術者や経営者を引き抜く
- 広告を出して商品の認知度を高める(ブランド化)
など、企業価値を高めるために使うこともできたはずです。
それらの企業努力をせず、ただ単に需給バランスを変えて見せかけの株価上昇を演出したところで、企業そのものの価値は高まっていません。
メリット・デメリットの両面が必ず存在する
以上のように、自社株買いをすることは短期的には株価上昇というメリットがありますが、長期的な企業の成長を望んでいる立場の人からするとデメリットにすぎません。
株価は短期的には需給で決まりますが、長期的には企業そのものの価値で決まります。
- 短期的な株価:需要と供給のバランス(欲しがる人がたくさんいれば株価は上がる)
- 長期的な株価:企業そのものの価値で決まる
あなたが短期・長期のどちらの目線で取引しているかは知りませんが、好材料に感じるニュースでも別の立場からすれば悪材料の場合もありますので、ご自分の取引手法に照らし合わせて慎重に判断したいですね。
ものごとには必ずメリットとデメリットが存在し、両者が存在するからこそ株取引の売買は成立するのですから。
参考リンク:
買い・売り、それぞれの立場の人がどう感じているかを知るためには、下記記事が参考になります。コインの裏表のうち片方しか見ていないと、あとで大きなしっぺ返しを受ける可能性があります。