コロナ禍の影響で、在宅ワークを導入する企業が増えています。私の働いている会社も昨年末から全社員在宅ワークになり、一度在宅ワークの味を知ってしまった私としては、もう出社勤務には戻れそうにありません(肉体的、精神的に)。

在宅ワークになると住む場所の制約が無くなるため、地方に移住する方も増えています。

地方に住めば、家は広くなり、家賃は安くなり、満員電車での通勤地獄からは解放され、わずらわしい人間関係からも解放され、大自然の中で美味しい空気を味わうことができます。最高じゃないですか?

地方に住んで、フリーランスとして働きながら月に10万円ほど稼ぎつつ、畑で農作物を育てて自分が食べる食料さえ確保できれば、十分生きていけます。生活コストも抑えられるので、都会で生活するよりも資産形成する上でも有利になります。

・・・と、こういう目論見で地方移住を実行する方が増えているようなのですが、正直なところ、資産形成の観点からは地方移住はおすすめできません。その理由を解説いたします。

地方移住でお金持ちが遠のく理由1:生活コストは安くない

地方移住を目指す方の頭の中では、「田舎=生活コストが安い」というイメージがあります。

土地が安いので家(不動産)も安く、食料は自給自足で賄えるのですからそう考えるのも当然です。

しかし実際に住んでみると全然生活コストは安くなく、むしろ都会よりも高く付くことがあるので要注意です。いくつかの注意点を見てみましょう。

​ (1)住宅費、住宅の修繕費

「空き家の古民家を格安で買い取って、夢のスローライフを送る!」田舎への移住を計画している方がよく口にする言葉です。私も転生したらこのような生活を送ってみたい。

が、しかし!現実の田舎暮らしはかなり大変です。家が余っているのは事実ですし、格安で手に入るのも事実ですが、これにはワナがあります。

安く手に入るということはそれだけ不便な場所に建っているということです。

田舎の家は、都会よりも早く傷みます。虫や動植物による侵害が酷いですし、都会のような排水設備も整備されていないため、「傷みやすく、修理業者を呼びにくい」「修理しようとすると高く付く」という現実があります。安い住宅にはそれだけ高いリスクが潜んでいるんですね。

日当たりが悪い、湿気が多い、動植物・虫が多い、上下水道が整備されていない、交通の便が悪い等など…、田舎暮らしは雑誌やテレビを見て都会の人がイメージするようなキラキラしたものではありません。

​(2)車の維持費が高い、1人1台が必須

田舎は公共交通機関が都会ほど充実しておらず、どこへ行くにも車が必要になります。運転免許が取得できる年齢になれば1人1台の保有が当たり前になり、それだけ車両に関係するコストが圧し掛かってきます。

税金の他、冬用タイヤの交換コストや各種メンテナンスコストもかかるため、都会に住んでいた時は不要だった車のせいで、家計が圧迫されることになります。

もちろんガソリン代も必要です。

都会から離れれば離れるほどガソリンの消費量は増え、ガソリンスタンド同士の競争も減るため1リッターあたりの単価も高くなります。

車の維持費 都道府県での比較

(3)燃料代

一人一台が必須の自動車のガソリン代のほか、冬に使う暖房器具の燃料代や草刈り機の燃料代、畑を耕す人はトラクターや耕運機の燃料代が必要です。暖房器具の燃料代は都会に住んでいても必要になりますが、それ以外は地方移住したことが原因で新たに必要になる経費です。

都市ガスが整備されていない地域も多く、高額なプロパンガスを契約することもあります。都会ではありえないほどの光熱費が必要になることを覚悟しなければなりません。

(4)国民健康保険料

財政に余裕のある地方自治体と財政が厳しい地方自治体とでは、国民健康保険料に雲泥の差があります。

「田舎に住めば何でも安い」というイメージを持ちがちですが、財政的に危ない自治体に移住すると、都会よりも高い国民健康保険料を支払うことになるかもしれません。

参考までに年収400万円(単身、介護保険未加入)の場合を載せておきますが、住む場所によって年収の10%分くらいの差が生じているので注意が必要です。移住を計画する場合には、こういった隠れコストにも注意を払いましょう。

国民健康保険料 年収400万円(単身、介護保険未加入)の比較

(5)町内会費や自治会費

田舎は良くも悪くも協同体意識が強く、町内会費やら自治会費やら、都会では支払う必要のなかった出費が飛んでいきます。

”一度も使ったことのない自治会館”の建て替え費用を外部からの移住者が負担させられるなど、不条理な出費を強制させられることもあります。

ゴミ捨て場1つを取り上げても、自治体のゴミ捨て場ではなくその地域で共同で作ったゴミ捨て場を使う場合には、高額な自治会費を支払う必要があったりするので注意しましょう。

(6)通信費

インターネットやスマホの通信費設備も、都心優先で整備されるため地方は整備が遅れています。

そのため設備上の理由により安い料金プランが使えないことも多く、遅くて高額な通信プランを我慢して使い続けなければならないことも!

先日楽天モバイルの「1ギガバイトまで無料」のプランが話題になりましたが、都会では使えても地方では使えません。

楽天モバイルの通信エリア

高速の通信環境を整えたい場合には、自費でアンテナを立てたり回線を引いたりする必要があり、都会ではなんの心配もなく使えていた通信設備の維持のために、高額な出費を強いられる可能性があることを覚えておきましょう。

(7)お返し

「田舎は自給自足が基本で、食料も近所の人が分けてくれるから食費が安く済む」と思い込んでいる方がいます。これはある意味では正しいのですが、おすそ分けに対してこちらから渡せるものが何もないと、田舎の人は牙をむいてきます。

田舎には助け合いの協同体としての精神が土台にあるため、困っている人には手を差し伸べてくれます。しかしこれは貰った分だけお返しができるというギブアンドテイクが前提条件となっているため、テイク(貰う)ばかりでギブ(あげる)が無くなると、相手は何も分けてくれなくなります。

野菜や果物が無料で手に入ることがあるのは事実ですが、貰った分に見合うだけのものをこちらも返さなければらならず、実はこういった隠れコストが意外と重いです。

その他:意外に物価も安くない

物価も安くありません。むしろ高いです。

スーパーやコンビニに置かれている商品は都会と同じ値段ですし、個人商店も競争相手がいないために値段が高止まりしています。ボッタクリのような価格で商売をしている店がたくさんありますので、田舎に住めばお金が貯まるという考えは甘いです。

 

ということで、地方移住すると「家賃は安い」ですが、コストアップにつながる側面もたくさんあります。都会で暮らしていたときよりも家賃は安く抑えられますが、トータルではそれほど安くならないというのが現実です。

地方移住でお金持ちが遠のく理由2:お金にならない雑務が多い(隠れコスト)

地方に移住すると、都会に住んでいた頃には気付かなかった様々な隠れコストの多さに悩まされます。

とくに、お金にはならないけど時間を大量に浪費する作業があまりにも多いです。

隠れコストの例
  • 草刈り
  • 故障した住宅設備の修繕
  • 道路の土木処理、清掃
  • 消防団活動
  • 町内会議
  • 地域のイベントの手伝い

これらの作業を 無償で やる(やらされる)必要があり、拒否すれば村八分にされるリスクがあります。

こういった足枷が大きいので、移住先は慎重に選ばなければなりません。

移住を目指す人は、都心を離れ、大自然の中で、のびのびと自由に暮らしたい!と夢見ていることがありますが、実際の田舎生活ではむしろお金にならない労働を強制されるために不自由な生活を余儀なくされます。

 

お金持ちになるためには1時間あたりの生産性(時間単価)を高める必要がありますが、お金にならない雑務をやればやるほど時間単価は下がってしまいます。

居住する家が広くなれば家を掃除する時間もそのぶん長くなりますし、買い物をするスーパーが遠くなれば、それだけ往復するにも時間が必要です。

お金を生み出さない時間を減らさない限り、時間単価は高まりませんので、田舎暮らしをするとお金持ちになるのが遠のきます。

お金持ちが遠のく理由3:一人勝ちが許されない雰囲気がある

田舎には「一人勝ち」が許容されにくい文化があります。

協同体意識が強すぎるため、なにかをするにもすべて「みんな一緒に」が基本です。

誰が一人だけが成功して良い思いをしていると、必ず邪魔をしたり足を引っ張ったりするメンバーが現れ、成功者を陥れようとしてきます。ホンモノのクソ野郎ですね。

都会なら他人に無関心な人が多いため、誰か一人だけが成功していたとしても、文句を言ったり足を引っ張ったりしてくる人はいません。

ところが田舎は他人に対して関心が強すぎて、しかもみんな暇人なため、他人の成功を快く思わずに邪魔をする人が多いのです。塀の無い刑務所並みの監視力で、抜け駆けしようとする成功者を監視してきます。

どんなに成功してお金をたくさん稼げるようになったとしても、地元の古参住民たちにも旨い汁を吸わせてやらない限り、出る杭として叩き潰されると理解しましょう。

地方移住でお金持ちになるのは難易度が高い(まとめ)

以上のように、地方に移住して資産を形成し、お金持ちになるのはかなり難しいです。

地方移住が資産形成に向かない理由
  1. 田舎は生活コストが高く
  2. お金にならない雑務が多く
  3. 一人勝ちが許容されにくい

このような理由により、お金持ちを目指すなら地方への移住は考え直すことをおすすめします。

もしも蓄財するために移住をするのであれば、ザ・イナカな場所を選ぶのではなく、地方都市への居住がコスパが高いと思います。

都心と田舎の良いとこ取りができる可能性が高いので、ITスキルが高い方や住む場所に捕らわれない働き方をしている方にはおすすめです。

利便性の高い地方都市で月に20~30万円ほど稼ぎ、生活費は10万円くらいに抑えられれば蓄財が進みます。再現性も高いので、お金持ちになるための1つのモデルとして検討してみてください。

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