住宅について考える際、持ち家にするべきか、それとも賃貸にすべきか、世間ではよく論争になります。
当ブログも資産運用やお金について書いているので、持ち家 V.S. 賃貸 論争に参加して自分の立場を表明したいと思います。
賃貸をおすすめしたい理由
ライフスタイルにもよりますが基本的には賃貸が有利ですので、私も賃貸をおすすめしています。
賃貸のメリットは家族構成やライフスタイルの変化に応じて間取りや住む場所、グレードを変更できることです。また、近隣に素行の悪い住民がいた場合でも、賃貸ならすぐに引っ越すことができるのも持ち家にはない大きなメリット。
引っ越しする度に費用がかさみますが、それでもあり余るほどのメリットがあります。・・・というよりは、持ち家を手に入れるよりも圧倒的にデメリットが少ないので、相対的に「賃貸の方がマシ」ということから、私は賃貸をおすすめしています。
金銭的には賃貸よりも持ち家の方が断然お得
同じグレードの家で比較した場合、金銭的な面では賃貸よりも持ち家の方が安上がりです。
なぜ賃貸の方が費用がかさむかというと、数年ごとの契約になるため『まとめ買い』の効果が薄れるからです。2,3年おきに契約するものよりも、10年、20年単位の長期で契約した方が割引率が高くなるのと同じ理屈です。携帯電話やトレーニングジムでも、数カ月おきに更新するよりも、年単位で契約した方がお得ですよね?
賃貸は長期契約でもせいぜい10年が限度ですが、持ち家なら何十年だって住み続けられます。一度建ててしまえば、定期的に手入れをすることで子や孫の代まで住居に困らないというのは大きなアドバンテージです。
賃貸ならライフスタイルの変化にも対応できる
賃貸は収入やライフスタイルの変化に合わせて住み替えることができます。
もちろん一戸建てや持ち家の場合でも新たに家を手に入れたり、今住んでいる住居を売却することができれば賃貸と同じように住み替えが可能ですが、賃貸よりも多くのお金が必要になりますし、時間もかかります。
新型コロナウイルスの影響で収入が激減した方は賃貸のメリットを実感していると思いますが、いま貰っている収入はいつ減らされるかわかりませんし、仕事が無くなって収入がゼロになることだって考えられます。持ち家だとローンを組んで家を手に入れることになりますが、収入が減らされたことでローンの返済に首が回らなくなり、泣く泣く家そのものを手放す人もいます。
賃貸であれば収入が減らされたり仕事が無くなったりして家賃が払えなくなったら、もっと家賃の安い物件に住み替えることで「家を失う」という最悪の状況を回避可能です。
長い間生きていれば子どもの数や一緒に住む家族の人数も変化しますし、働く場所だって変わることもあるでしょう。
・パソナ、本社機能を淡路島に 東京集中の弊害回避(日本経済新聞)
いまどき転勤で地方に飛ばされる…なんて時代遅れなことは少ないと思いますが、大企業でも一部ではこのような風習が残っています。
持ち家だと必然的に単身赴任するか家を手放すことになりますが、家族と離れてまで仕事をする価値があるのか疑問ですし、売りたいときにタイミングよく家が売れるとは限りません。
賃貸ならライフスタイルや家族の人数の変化にも柔軟に対応できますので、特に若い方ほど賃貸に住むメリットは大きいです。
高齢者だと貸してくれるオーナーがいないのでは?と心配
賃貸をおすすめするときによく心配されるのが、「高齢者にも物件を貸してくれるのか?」という声です。
たしかに10年くらい前までは、高齢者に物件を貸し出すのはリスクがあるという考えが主流でした。
高齢者の多くは年金収入で生活していますので、オーナーからすれば家賃の支払いが滞った場合に回収できるか不安になりますし、独居の場合は孤独死による事故物件化するリスクもあります。そしてこれらの不安要素は現在でも解消されていません。
しかし日本は超高齢化社会に入るため、高齢者なしには不動産業が成り立たなくなってしまいました。
そのため、たとえ高齢者だろうと年金をもらっている方であればオーナーも貸し出さざるを得ないのが現状であり、年金も貯蓄もなく収入がゼロの場合は渋られるかもしれませんが、それでも基本的には高齢者であっても心配しなくても大丈夫です。
そもそも高齢になって体の自由が利かなくなってくると、介護付き高齢者住宅(いわゆる老人ホーム)や高齢者向けサービス住宅といった賃貸住宅に住むことになります。いずれは老人ホームやサービス住宅に住むことになるのであれば、最初から賃貸住宅に住んでいた方が余計な手間がなくせます。なぜなら、持ち家に住んでいた人が高齢になってから老人ホームに住み替える場合、いままで住んでいた持ち家が売れるとは限らず、金銭的に不利になる可能性があるからです。
自営業の場合は家賃の一部を経費にできる。リフォームできる賃貸物件も
経済悪化による従業員の所得減少を背景に、大企業でも副業が解禁され個人事業主(自営業)として働く方が増えています。
個人事業主として自宅で仕事をしている場合、家賃の一部が経費として計上できます。持ち家でも水道光熱費や通信料を経費として計上できますが、家賃までもが経費にできるのは賃貸に住む人だけの大きなメリットです。
また、賃貸物件をリフォームしたい場合でも、ハードルは持ち家よりも高くなりますがカスタイマイズ可能な物件が増えています。交渉次第となりますが、賃貸物件でも持ち家のような快適さを追求できることがありますので、リフォームに興味がある方でも賃貸物件を選択肢に入れておいて損はないです。
どうしても持ち家(不動産)を買いたい場合
以上のように、私は持ち家よりも賃貸をおすすめしています。
しかしそれでも、どうしても持ち家が欲しいという方もいると思います。その場合は、以下の点に注意することで持ち家購入の失敗を最小限に抑えることが可能です。
災害リスクを最小限にする
日本は災害大国です。いつ、どんな災害に見舞われるかわかりません。災害による資産価値の暴落リスクが高いということです。
- ハザードマップで土砂崩れや浸水など、災害リスクの高い地域を避ける
- 古い地図を確認し、昔は川だった場所や川が近くにあった地域(旧河道=きゅうかどう)を避ける
これだけでも初歩的なミスは防げます。
最近では災害によるリスクが注目されるようになり、駅近くの好物件でも資産価値が下がる可能性が高いので、災害リスクは見過ごせません。
中古物件を買う
日本には新築信仰がありますが、新しい家をローンを組んで買うのはおすすめできません。払った金額のうち半分は融資してくれた銀行へ金利や手数料として上納しているにすぎず、買った瞬間に資産価値が半分に下がるまさに”夢”のマイホームだからです。
中古物件なら安く手に入れることができるし、むかしからその地域にあるということはそれだけ長い間災害の被害に見舞われなかったことも意味しています。近年の新築物件は災害リスクの高い地域を開発して無理矢理建てた物件も多く、そういった物件に比べれば安全度が高いと判断でき、新築よりも中古物件の方が低リスク資産として入手できます。
ローンを使うときは収入の25%以内に収める
持ち家を購入する際、ほとんどの方はローンを組み”借金”で家を買うことになります。そのローンを組む時の注意として「ローンの金額は収入の25%以内に抑える」ことが必要です。
新型コロナウイルスの影響や過去の金融危機、リーマンショック等でも露呈していますが、収入の25%以上のローンを組んでいた場合、収入の減少やボーナスが減額されたりするとローンが払えなくなる可能性が高くなってきます。
10年、20年かけてローンを支払っていく途中で、いまと同じかそれ以上の収入を安定的に稼ぎ続けられる可能性はかなり低いです。公務員のように安定した職業であったとしても、ケガや病気で働けなくなったり、パワハラが原因で退職に追い込まれる可能性だってあります。
ローンは収入の25%以内に抑え、多少の危機が訪れたとしてもビクともしない体制が必要です。
都心部の値上がりが続く地域の物件を買う
田舎の人口が減少し続ける地域の住宅は、時間が経過するほどに資産価値が減少します。しかし都心部の人口流入が続く地域であれば、地価の上昇による資産価値の低下を避けられたり、逆に買ったときよりも高値で売り抜けたりすることが可能です。
どうしても持ち家を買いたいのであれば、できるだけ都心部の開発地域の物件を買うようにしましょう。なお、日本で人口が増加する都道府県は東京だけだと予測されています。
ライフスタイルに合わせて住処を選ぼう
まとめると、
- 賃貸の方が自由度が高く、家族構成の変化やライフスタイルの変化にも合わせやすい。ただし、金銭的には持ち家の方が有利
- 持ち家を買う場合には、災害リスクやローンの負担額に細心の注意が必要。また、売りたいタイミングで売れないことがある(流動性リスク)ので、生涯住み続ける覚悟が必要。ただし、経済的にはまとめ買い効果により賃貸よりも有利になる
- 大切なのは、ライフスタイルに合わせて住処を変えたり選んだりしていくこと。住居が原因でライフスタイルや仕事に縛りができたり、家族に悪影響が出たりするのは避けたい
ということです。
私は賃貸派ですが、持ち家には持ち家にしかない魅力もあると思います。既存の価値観や常識に縛られず、あなたのライフスタイルや価値観に合わせて失敗しない住宅選びをしてください。