ずいぶん前に買ってから積読していた『エッセンシャル思考』を読みました。エッセンシャル思考とは「最小の労力で最大の成果を出すためには何をすればいいのか?」という命題に対する答えになるもので、効率よく成果を出すための教科書みたいなものです。

この本の中では興味深いものがたくさん書かれているのですが、私が特に注目した部分は「マルチタスクはOKだけどマルチフォーカスはNG」というものでした。

マルチタスクで虫歯になった自分

マルチタスクとは「AをやりながらBをする」「テレビを見ながら歯を磨く」「電話をかけながら掃除をする」といったもので、いわゆるながら作業のことです。

私はネットサーフィンをしながら歯磨きをしていて虫歯になったことが何度もあり、また、映画を見ながらメールの返信をしたりしてなかなか作業が進まなかったことがあるので、ながら作業には否定的な立場です。複数の仕事を同時に進めるよりも1つずつ集中的に仕事を片付けていった方が、結果的には質の高い成果を最速で作れると考えています。

当然エッセンシャル思考でもマルチタスクは禁止だと思っていたのですが、本によればマルチタスクでも構わないそうです。は?なんで?と思ったのですが、本を読んで納得しました。

集中力の分散(マルチフォーカス)が良くない

マルチタスクと聞くと複数の仕事に均等に力を振り分けているように聞こえますが、実際は違います。どちらかの仕事に集中力をたくさん振り分け、もう片方の仕事にはあまり集中していないことが多いです。そのため集中していない方の仕事はおざなりになり、どちらか一方の仕事でしか良い成果が出せない、もしくは両方とも中途半端な成果しか出せなくなります。

これはマルチタスクではなく、集中力の分散なのでマルチフォーカスと言えます。

複数の仕事に対して100%の集中力を振り分けることができるのであれば、どの仕事でも最高の仕事ができるため問題ありません。しかし集中力の分散(マルチフォーカス)をすると、どちらかの仕事が低品質になったり最悪の場合は両方とも質の低い仕事になってしまいます。

私の過去の経験を振り返ってみると、マルチタスクをしているようで実際はマルチフォーカスをしていただけ…ということばかりでした。歯磨きをしながらネットサーフィンしていたときも、ネットサーフィンにばかり集中していて歯磨きは手を動かしているだけ。歯をきれいに磨こうとは微塵も考えていませんでした。これでは虫歯になっても仕方がありません。

本来であればネットサーフィンと歯磨きの両方に注意を払い、両方とも最高の仕事をしなければなりません。これが本来のマルチタスクです。しかし私の場合は歯磨きには集中しておらずネットサーフィンにしか集中していなかったため、マルチタスクのように見えて実際は単なるマルチフォーカス(集中力の分散)でしかありませんでした。

本来のマルチタスク能力を身に付ければ時間を節約できる

複数の仕事を同時に行っていたとしても、どちらの仕事にも100%集中することが出来るのであればマルチタスクをしても構いません。しかし私のようにどちらかにしか集中できないのはダメです。

もしもマルチタスクをするのであれば、どの仕事に対しても100%集中できるようにしましょう。

複数の仕事に対して100%集中するためには訓練が必要です。耳から入ってくる情報と目から入ってくる情報を別々に処理したり、脳の思考速度を早くしたりする訓練です。

これは普段からトレーニングしないと身に付かないですが、ラジオを聞きながらネットで情報収集してみたり、持ち時間を決めて複数の人と同時に将棋を差してみたりすれば、ある程度は身に付くんじゃないかと思います。

人は基本的には複数の仕事に集中することができません。しかしトレーニングをすれば複数の仕事を同時にこなし、しかもそのすべてが完璧にこなせる本来のマルチタスク能力が手に入ります。集中力が分散するマルチフォーカスはダメですが、本来のマルチタスクができるようであればぜひ複数の仕事を同時にこなし時間を節約してみてください。そうすればエッセンシャル思考のように、最小の労力で最大の成果を出すことが可能になります。