昨年はアメリカ株への投資が活発になりました。

この理由について、日本とアメリカの証券市場の違いという観点から考えてみたいと思います。

「配当金が~」とか「過去のSP500が右肩上がりで~」といった話はしないので、アメリカ株に飽きてきた方でもご安心ください。

時価総額が低い

会社の価値を比較・判断するのは非常に難しいですが、客観的な判断材料の1つとして「時価総額」が使われます。

時価総額が大きければそれだけ企業が強大であることを意味するので、倒産のリスクの少ない良い会社だと考えれられるからです。

日米の証券市場に上場している企業の時価総額を比べると、圧倒的にアメリカ市場の方が巨大です。

アメリカ上場企業の時価総額ランキング(2019年1月8日時点)を見ると、

1位:アマゾン・ドット・コム 810,015,650千ドル(約89兆円)

2位:マイクロソフト 789,115,286千ドル(約85兆円)

3位:アップル 715,368,749千ドル(約78兆円)

4位:アリババ・グループ・ホールディング 380,506,727千ドル(約41兆円)

5位:アルファベット 376,283,681千ドル(約40兆円)

日本の上場企業の時価総額ランキングでは

1位:トヨタ自動車 21,780,508 百万円(約21.7兆円)

2位:NTTドコモ 9,659,992 百万円(約9.6兆円)

3位:NTT 8,817,733 百万円(約8.8兆円)

4位:ソフトバンクグループ 8,765,659 百万円(約8.7兆円)

5位:三菱UFJフィナンシャル・グループ 7,737,929 百万円(約7.7兆円)

日米で圧倒的な差があります。

国の広さも人口も違うので当然ではあるのですが、投資先として見るとアメリカ株の方に軍配が上がります。世界中の投資家たちも同じように判断するため、アメリカ企業にはますますお金が集まり事業が拡大しやすくなり、株価も上昇しやすいです。

アメリカ株の方が倒産による上場廃止リスクが低く、逆に日本株は倒産リスクの高い株を掴まされている…とも言えます。

買いやすさ(購入時の必要金額)

投資する際の必要最低金額も全然違います。

アメリカ株は1株単位で購入できるため、1,000円とか2,000円くらいの金額から個別銘柄に投資できます。しかし日本は100株単位での売買になるため、個別銘柄は最低でも5万~10万円用意しなければなりません。

ETFや投資信託など1株単位、1,000円以下で買えるものもありますが、個別銘柄には投資できません。

必要最低金額が低ければ低いほど株は買いやすいです。日本株はこの点でもアメリカ株に負けており、資金調達に不向きな市場といえます。

投資への関心・考え方・金融教育・国民性

これは事実かどうか定かでない部分もあるのですが、投資に対する国民の考え方も違います。

アメリカだと投資をするのが「普通のこと」と考えられており、普通の主婦でも株を持っていると聞きます。アメリカのドラマや映画を観ると、お金に困った時に「よし!いま持っている株を売って資金を調達しよう」みたいな場面があったりします。貯金はなくても、株や債券などの”金融資産”は持っているんですね。

投資がどれだけ一般に普及しているか?

金融商品に対する知識を国民がどれだけ持っているか?

この点でもアメリカが圧倒しています。

そもそも日本では金融教育を全然やっていませんからね。

私がはじめて経済の勉強をしたのは高校生になってからです。それも政治・経済の授業が週1時間あっただけなので、経済の勉強は半年間しかしませんでした。これでいきなり社会に放り出されても、経済のことなんてわかるわけありません。

金融商品に限らず税の知識も不足しているので、国から税金をぼったくられます。

確定申告をするなどして払い過ぎた税金を自分で取り返そうとしない限り、搾取され続けます。

複利の法則も小学校のときに一瞬しか勉強しないため、借金の金利が理解できず破産する人も出てきます。72の法則を知っている人も少ないし、本当に酷いものです。

また、日本人はお金持ちに対して嫉妬したり足を引っ張ろうとしたりする汚い国民性もあります。お金持ちを見ると「あいつは悪いことをしてお金を手に入れたんだ」と勝手に思い込む人までいます。たしかに悪いことをしてお金持ちになる人もいるのでしょうが、お金持ちの大部分は良い人です。

余談ですが、漫画(アニメ)の『名探偵コナン』では投資家が事件の被害者になる話がたくさんあります。「投資家=悲惨な死に方をする」という謎のテンプレートが出来上がっています。原作者の青山剛昌は一体どういう人生を送ってきたのか?と不安になるレベルです。

投資や投資家に対する悪いイメージが払しょくされない限り、日本での投資は活発化しないでしょう。こういった”プレイヤーの質”が、日米証券市場の違いにつながっています。

その他

他には上場基準ペナルティの有無も関係あると思っていたのですが、調べてみると上場基準については日本株、米国株ともに大差ないようでした。

もしも上場基準がアメリカの方が厳しかったりしたら、弱小企業ばかりが集まる日本市場では倒産企業が出るリスクが高くなり「投資は危ない」と思われても仕方ないと思っていました。

しかしどうやら日米ともに上場基準にはそれほど違いが見られないため、この点については杞憂のようです。

もう1つの「ペナルティ」についてですが、日本では新規上場銘柄の粉飾決算による上場ゴール不正会計など、企業側に不正があった際の罰則が弱いです。

株主を騙した際や不正な会計処理を行った際の罰則が強くなれば、このような不正は少なくなるのではないでしょうか?少なくとも現状では”やったもん勝ち”の状態であり、企業にとっては「不正をやった方が得」というのが実情です。

不正発覚の際は高額な制裁金を課すようにして、「不正は損」という状態に改める必要があります。内部告発者への報奨金制度や告発者を保護するプログラムも存在せず、企業の不正を正す術もありません。

タカタの内部告発時のように、

  • 不正企業への罰金
  • 内部告発者への報奨金

を法律によって強化・新設したり、内部告発者が不利益を被ることのないように保護するための法制度も必要だと感じます。

参考記事:タカタ元社員に米国公益通報者報奨金として1億円超支払いへ

これらの制度が不十分なままでは、日本企業の不正が減ることは無く、株主の潜在的なリスクが存在したままです。

現状では日本株に投資をするリスクが過大なため、日本市場で投資しようとする人は増えにくいと言えます。

日本とアメリカの証券市場の違い(まとめ)

以上のように日本とアメリカの投資環境を比較すると、

  • 日本企業は時価総額が低い(倒産しやすい。クソ株を掴まされやすい。)
  • 日本株は投資金額がたくさん必要で買いにくい(企業が資金を集めにくい=成長しづらい)
  • 日本人は金融教育が低レベル(投資しようとする一般人が少なくなる)
  • 企業側が不正を行った場合のペナルティが不十分(株主を騙しても罰則ナシ。悪いことをして金儲けをする企業があっても取り締まれない)

となります。

このような現状があるため「日本株に投資するよりもアメリカ株に投資しよう!」と考える人が増えるのも自然なことです。

投資先を探している人たちがもっと安心して投資できる環境を整えたり、国民1人1人の金融知識をレベルアップさせたりしない限り、日本の株式市場はジリ貧だと感じました。

資産運用の王道パターン、これをやれば誰でも小金持ちに!